人は本を作り 本は人を作る ー パジュ・ブックソリ2012 レポート

パジュ・ブックフェスティバル2012 ツアー(2012年9月14日~9月18日)

文責:関口  

パジュ出版都市 は、出版、印刷、紙や本の流通など出版係企業を一堂に集めた計画都市で、韓国の北西部、京畿道(キョンギド)にあります。この地で毎年9月開催されている本の祭典「パジュ・ブックソリ」(9月15日~9月23日)を、現代韓国文学=K文学を日本に率先紹介する出版社クオンが紹介します。
今ツアーは「パジュ・ブックソリ」をメインに近郊のヘイリ芸術村、北朝鮮を望むオドゥサン統一展望台観光を織り交ぜ、ソウルにも立ち寄る盛りだくさんな内容です。

 

9/14 一日目。韓国へ出発。

パジュ・ブックフェスティバル ツアー 4泊5日の旅の始まりです。
成田集合組で記念撮影。クオンのキム提案でポージング付き。翻訳、出版、古書店オーナーなど韓国と縁深いお仕事をされている方々がツアーに参加されています。

 

インチョン空港到着。機体から1歩踏み出すと数度下がった空気を肌で感じます。残暑の東京から解放された心地よさです。関空組、現地集合組と合流し、現地スタッフのヤンさんがお出迎え。早速第1スポット、オイドへ向かいます。肩を並べる高層マンション群が次々に過ぎて行きます。20kmにも及ぶインチョン大橋は壮観です。

到着したのはシフン市オイド(烏耳島)にある漁港町。デートスポットの防波堤、灯台もあります。カモメが騒がしいと思ったらヤンさんが私達のために餌を撒いて呼込んでいました!スタッフの鈴木も餌撒きにチャレンジ。ここでもポージング付き記念撮影。

 
 

魚市場。水槽の鮮魚を自ら選び、調理をお願いする食堂で晩御飯。ヒラメのなどのお刺身をサンチュやにんにく・生野菜をエゴマの葉で巻いて、わさび醤油やチョゴチュジャン(甘辛ミソ)で頂くのが韓国スタイル。活きダコの刺身は吸盤注意!舌に引っ付いたら離れません。焼酎は麻酔がわりにお手元にどうぞ。

 

厚木で韓国語の教室を開いている韓国育ちの松村さん。食材についてや食べ方などいろいろ教えていただきました!頼れるオモニです。食堂からは燃えるような夕焼けがキレイ。

 

そして、夜のハイウェイを飛ばしてパジュ出版都市へ向かいます。宿泊のホテル紙之郷(ジジヒャン)はデザインホテルな佇まい。おしゃれ!第一日目終了。

9/15 ツアー2日目。

パジュ・ブックフェスティバル初日

 

今ツアーの団長・舘野先生の引率で斬新なデザインの現代建築が立ち並ぶ出版都市を散策しました。舘野先生はこの出版都市創立にも関わりのあるお方です。

まずは、このフェスティバルを統括しているハンギル社へ向かいます。

人文書・児童書などで名高いハンギル社。我が一行は社長、金彦鎬(キム・ウォンホ)氏の社長室へ案内されました。
そこで社長自筆の「一冊の本のために」(団長・舘野先生が現在翻訳中!)をなんと全員にプレゼント。太っ腹です!この本には創業1902年、神保町の洋古書の北沢書店についても書かれていますが、実は北沢書店のオーナー北沢さんも娘さんの理奈ちゃんと共に今回のツアーにご参加されています。
キム・ウォンホ社長は、大江健三郎よろしい丸メガネで、赤いネクタイの柄は本を開いた扇模様。ちょっと可笑し味を湛えたファッションの氏は東アジア出版人会議の代表を務め、韓国ひいては東アジアの出版界になくてはならない重要人物なのです。
近日行なわれるフェスティバル・ブックアワードの表彰状もユニークでB5ほど品のある角材でした。これはキム社長のアイディアで紙は木からできているからだそうです。ツアー参加者でネイティブのスーザンが表彰状文面のEnglishを読上げます。
(スーザンはアメリカ・ミシガン州出身。東大博士課程に在籍し、現在はソウル大学に交換留学生です。彼女も神田神保町が大好き!で古書を研究しています。)ここでも記念撮影。

 
 

次に伝統文化・美術を扱う出版社、悦話堂に伺いました。ショーケースショップには美術書などが並びます。翻訳家の五十嵐さんと出版社:明石書店の黒田さんが大きな図録を興味深く見ています。盗掘古美術品に関わる仏像の本のようです。

 

韓国文化ライターの田中さんが探していた、韓国のブックデザインの本「韓国近代国書装幀少史」を見つけます。悦話堂でのティータイムは田中さんによる熱いプレゼン。その甲斐あって8冊も売れました。

 

パジュ出版都市を散策。出版社の児童書部門が軒を連ねています。社屋周りをSLが走るアリスハウス 。大手書店KYOBO。キムヨン社、BORIM PRESS などなど。

 
 
 
 

中心地のショッピングモールで昼食。チゲ鍋や冷麺などが人気でした。

午後はフリータイム。三々五々街を楽しみます。

舘野団長のお誘いで黒田さん、丸山さん、五十嵐さんと私の5人で、ブックフェスティバルの一角でおこなわれた韓国家屋についてのレクチャーを聴講しました。熱心に聴きいる御三方!?

 

旅行会社に勤める丸山さんがレクチャーを要約してくれました。日本占領下時代に建てられた日本家屋と韓国伝統の建築様式「韓屋(ハノク)」、それぞれの長所を活かし融合を提案する内容もあったそうです。韓国語を知らない私には心強いツアーメンバーばかり。多謝。

パジュ出版都市の計画は「自然を壊さない」もコンセプト。開発後も都市に横たわる沼地はそのまま。

 

活版印刷資料が陳列された活版工房に立ち寄りました。ハイデルベルグの活版印刷機。活字棚。活字とはこの物達の呼び名なんですよね。日本でフォントといえばモリサワ。そのモリサワの写植機。

 

 

夕刻からは開会式。ハリウッド張りのクールなSPに警護されたパジュ市長などの来賓の挨拶がつづきます。公務員Rockシンガー「DMZ」やアイドル「TEENTOP」など続々登場。音楽の祭典でもありました。韓国のタモリ?サングラスがトレードマークの司会者も有名なようです。爆竹花火、クレーンカメラ、煙幕、野外ならではの韓国エンタメパワー炸裂のステージが展開されます。

 

式の途中にお暇して会場向かいの焼肉屋で晩御飯。

韓国焼肉の代名詞、サムギョプサル。豚のバラ肉を塊のまま焼きます。 ハサミで切った肉を野菜に包み頂きます。エゴマの葉や薬味が体に美味しいですよね。

 

韓国といえば焼肉!ですが、この旅を振り返ってみてば、焼肉はこの時だけでした。韓国の食文化は豊かですね。

お店を出ると開会式は丁度フィナーレ。盛大に花火が打ち上がります。日本の花火は侘び寂び文化の淑やかさですが、さすが韓国流花火。俊敏で景気もよく清々しい爆発でした。

 

ホテルに戻るとハンギル社キム・ウォンホ社長が迎えてくれました。ロビーでツアーメンバー一同と団欒。お忙しい中にも関わらず、キム社長のもてなしの心意気に感激です。スーザンがソウルで流行中のガンナム・スタイル・ダンスを披露してくれました。まったりと夜も更け第二日目終了。

 

9/16 ツアー3日目。

ブックフェスティバル その2。
スーザンはカトリックなので日曜のミサに参加します。韓国はクリスチャンが多いので其処彼処に教会があります。ソウルから参加のパクさんが近所の教会まで車を出してくれました。その流れで今晩帰国する申さんと金さんとでヘイリ芸術村へ。明日、公式訪問しますが一足早くじっくり見学です。

 
 

途中、出版都市の外れ、ロッテ・プレミアムアウトレット坡州店。イングリッシュ村は敷地内では英語しか使用できない子ども達のための研修施設。ガラス張りバルコニーは韓国マンションの特徴。傍らを走りすぎます。

アーティスト達のためのヘイリ芸術村。起伏ある緑豊かな敷地にユニークな建築が数多あります。
東京の代官山や表参道、目黒区などに見受けられるようなオシャレで和める芸術村。ギャラリー・雑貨・ブティックなどの店舗ビルがあり、休日の散策コースに打ってつけの村。中央に発案者のハンギル社書店。同社の出版物が居並びます。併設されたウィリアムモリス美術館はまた明日。

   
 
 
 

芸術村では自由行動だったのですが、ランチのお店でパク さんに偶然ばったり。パクさんおススメの韓国うどん、カルグクスを頂きました。店の裏には伝統古民家「韓屋(ハノク)」の和みカフェ。やはりこの旅は建築日和な趣です。

   

脱線。私一人、路線バスでパジュ出版都市へ。恥ずかしいことに韓国語が無知な私にはちょっとした冒険。危うく反対方向のバスに乗車してしまいそうなところを若者カップルに助けて頂きました。

 

パジュ出版都市。ホテル・ジジヒャンにて、クオンが刊行している「楽器たちの図書館」の筆者:キム・ジュンヒョク氏との懇親会が開かれました。私はホテル戻りが少々遅れ、皆と合流出来ず参加が叶いませんでした。失礼しました。

  若手作家キム・ジュンヒョク短編集
  「楽器たちの図書館」






少し街を散策してから、ブックフェスティバルの催し物「ハングル展」へ行きました。
まず、ブックフェスティバル。
日曜日の今日は、街中が神田神保町のような賑わいです。路上に並ぶテントは親子連れの人々で溢れます。出版社の児童書部門が目立つパジュ出版都市ですが、それにしても本のお祭りにこれほど子ども達が溢れるとは。韓国の教育に対する姿勢が窺いしれますね。
大通りはセンターにもずらりと駐車されています。交差点角の韓屋の門前に安重根の石碑がさも事もなげに立っているます。歴史や文化に思い馳せます。

 
 
 
 
 

パジュ・ブックフェスティバル2012のメイン企画。
アジア出版文化情報センター展示場での「ハングル展」を紹介します。 우리말 / 우리글 / 우리뜻
韓国語 / 私たちの言葉 / 私たちの意志
한글기초
ハングルの基礎
民族衣装チマチョゴリの足袋、ボソンの型紙にのこるハングル。
型を取った人の特徴などが書き記されています。
사라진 한글 자
消えたハングル文字
초등 글씨본 사학년용
小学校 文字手本 4年生

印象的だったのは展示方法。デジタルツールを活用したり、レプリカに手に取れる展示や、書の実演パフォーマンスも。ワードカードでフレーズを組み立てて仲間で撮影会など参加型のコーナーもあり趣向を凝らます。

   
 
 
 

夜はパジュブックフェスティバル開催記念パーティー。
余談ですが、会場へ向かう道すがらのことです。
韓国大手書店KYOBO(教保文庫)の社屋があり、コーポレートアイデンティティでしょうか、
「사람은 책을 만들고 책은 사람을 만든다」との看板がありました。翻訳者の中野さんはふと声に出します。「人は本を作り、本が人を作る。」するとすぐ様といい直します。「人は本を作り 本は人を作る。の方が相応しいわね。」翻訳者の心意気を垣間見た瞬間でした。

さて、到着した会場も素晴らしく美しい建築です。今年のパジュブックフェスティバルはオーストラリアの出版を紹介していました。パーティーのホストをオーストラリアの方が務めます。
毎年7月にお台場で開催される東京フェア。来年のテーマ国は「韓国」。それもあって東京国際ブックフェアの岩田女史も駆けつけて下さいました。ハンギル社社長・金彦鎬(キム・ウォンホ)氏とツーショット。

 
 

モダンなギャラリー空間のような会場。大きな白い犬のスカルプチャー。
彫刻がインスタレーションのように作用して空間が変貌し、小人になったよう。
野獣を手なずける五十嵐さん。

 

翻訳家の関谷さんは今回お母様と参加されています。関谷さんはK文学シリーズ第3弾の「長崎パパ」を翻訳してくださったYY翻訳会のメンバー。このパーティーの場で聞いたのですが、関谷さんは「長崎パパ」を仕上げる前、本を片手に現地取材をしたそうです。たとえばトラム。路面電車の停車場を駅というの?土地の人に馴染みのある表現は?景色や街並みに不自然な描写はない?リアリティーを追求した現場検証の旅。この翻訳者魂には脱帽です。 ありがとうございました!

 
  長崎を舞台にした絆と新しい共同体の物語
  現代韓国を代表する作家・具孝書(ク・ヒョソ)
  「長崎パパ」





ツアー参加の皆さまも楽しく歓談中。
京都で骨董業を営む小林玲子さんはいつでもキラキラオーラで笑顔が素敵です。一瞬のシャッターチャンスにもばっちりカメラ目線。

 
 
 

最後にパジュ・ブックフェスティバル2012実行委員長である金彦鎬(キム・ウォンホ)氏から挨拶。
キム・ウォンホ氏が言葉を発すると日本語、オージー英語、台湾語と次々通訳さていきます。言葉のリレー。

 

お土産にエプロンを頂きました。そういえば日本の書店では店員さんは皆エプロンをされていますね。韓国、オーストラリアではどうなんでしょうか?

パーティーの2次会はブックカフェ作家世界 で。
作家世界は、作家の活動をまとめ紹介する本を出版しているセゲ(世界)社のブランドです。
社長の崔ソノ氏は出版協会副会長。このブックカフェもプロデュース。昨夜の開会式は総合ディレクターだそうです。
崔社長や詩人のアン・ジョンオク先生は永年丸山健二のファンだと判明。丸山氏は長野の安曇野に暮らす作家。丸山氏に会いたい。クオンのキム・スンボはなにやらアイディアが浮かんだようでワクワクしています。
フランス語圏スイス人のギオム氏も同席されました。彼はスイスでブックフェスティバルを開催するために訪問されているそうです。翻訳家の五十嵐さんは今年5月に亡くなられた作家、パク・ワンソ氏の「作家世界」シリーズを買い求めようとすると、いやいや崔社長がプレゼント。おもてなしの心意気はここでも。

 
 

9/17 ツアー4日目。

天気予報士の資格ももつ丸山さんが台風の直撃を確信していた通り、朝から大雨です。
今日は昨夜のパーティー参加者の一行でパジュ観光です。北朝鮮国境付近にある烏頭山(オドゥサン)統一展望台見学を予定していましたが、雨のため目的地を変更し、バスでイムジン閣へ向かいます。

イムジン閣は38度線DMZ(非武装地帯)を臨んだ観光地です。イムジン河に架かる鉄道橋「自由の橋」の袂にあります。園内には小さな遊園地もあり非武装地帯の境界線とは思えぬ緊張感ですが、子どもをこの場所に連れてくるための餌、改め、知恵だそうです。雨に霞む「自由の橋」。有刺鉄線に警備所。ジープが走りゆきます。

 
 
 

イムジン河の向こう岸は北朝鮮。

 

大雨のハイウェイをひた走り、ヘイリ芸術村へ。ビビンパの王様を頂きました。

 

ヘイリ芸術村の中心地。ハンギル社の書店とウィリアム・モリス美術館。キム・ウォンホ社長は無類のウィリアム・モリスのコレクター。モリスは「モダンデザインの父」と謳われる19世紀イギリスで最も傑出した芸術家、デザイナー、詩人です。現在の本の原型にも大きな影響を与えています。

 
 
 

キム・ウォンホ社長は日本でも神保町古本屋街でモリスにまつわる蔵書を蒐集しました。
今ツアーに参加されている北沢さんが3代目、1902年創業洋古書・北沢書店でもずいぶん購入されたようです。
この美術館でも書物史に関する展示資料の中に北沢書店で入手したものがありました。古書売買特有の奥付ケージの印に、北沢書店の字が覗けています。久々の再会を祝し北沢親子と共に記念撮影。驚いたことに、北沢さんがその展示されている書物のもつバックヤードや歴史的位置付け、ここにある価値をつらつらと述べだしました。神保町の書店は古書がところ狭しと天井まで積み上げられたイメージ。たとえ価値の高い本とはいえ、いつか売買した1冊についてウンチク深いその知識には唖然とするばかりです。

 

そしてソウルへ。自由行動のソウル。

 

ホテルに程近い国立中央博物館に行く五十嵐さん。
美容に抜かりないマダムたちは韓国エステに。
栄養湯(ポシンタン)、犬肉料理にトライするツアー最若女子たち。

明石書店の黒田さんは自社刊行書籍『韓国を体験する68章』(仮題)の出版記念夕食会を主催するため仁寺洞へ。舘野団長、翻訳者 中野さん、翻訳家の関谷さんも参加。 (12月刊行予定『韓国を体験する68章』(仮題)は、ツアーメンバーの舘野団長、翻訳者中野さん、クオンのキムも執筆しています。 )

 
 
 

9/18 帰国

朝食をホテル近くの食堂へ。参加者全員で頂きました。
予定期日で帰国するのは参加者の半分。ほかの方々には韓国での仕事が待っています。
ホテル出発前にホテルエントランスで最後の集合写真。

始まりのポイント、インチョン空港へ。爆走が基本の韓国ハイウェイ。ハンガン新名所はドラマの撮影地になりました。国会議事堂。干潟に覗ける赤いサンゴ草。最後に現地スタッフのヤンさんと理奈ちゃんのツーショット。お父上の前でも臆面なく肩に手をまわせる男気。。。現役女子大生の理奈ちゃんは初めての韓国。初めての親子旅。「二度とお父さんとなんて旅行しない!」の決まり文句も飛び出しました。お父様との時間を大切にね!

 
 
 

旅は道連れと申しますが今回のパジュブックフェスティバルツアー。参加者していただいた皆様の個性が彩った旅となりました。

今日の日本では、韓国の文化が日常に溢れ体験できる時代になっています。
しかし韓国の書籍、小説などの翻訳本を散見することはそれほどありません。
このような交流を重ねあって韓国の書物が日本で多く翻訳出版されていったなら素敵ですね。

クオンは来年もこのパジュツアーを企画予定しております。ご期待ください。